温熱療法としての入浴と高濃度人工炭酸泉温浴
浦川 豊彦 （獣医師・医学博士）
2007年２月
1. 温熱療法としての入浴
(1) 入浴の功罪----入浴事故死は年間1万4,000人!
(2) 自律神経と免疫
(3) 高精度温浴装置の開発と動物実験
(4) 熱ショックたんぱく質HSPsと免疫
2. 高濃度人工炭酸泉温浴
(1) 高濃度人工炭酸泉による血流の著明な増加
(2) 健康には良いのは酸素か二酸化炭素か？
(3) 高濃度人工炭酸泉の医学応用
(4) 一般家庭への普及
要約
入浴事故死は年間1万4,000人と言われています。どうしたら防ぐことができるのか？そもそも入浴がもたらす温熱効果、特に免疫との密接な関係を明らかにしたいと思います。適切な湯温は自律神経系のうち副交感神経に作用します。湯温42℃を超える高温浴は交感神経を興奮させ血圧の急上昇を招き、血液凝固系に作用し脱水と共に血栓形成を促します。
私たちは温浴を科学的に解析するために、高精度温浴装置を作成し、大阪府立大学の獣医グループの協力を得て、イヌとネコそれにマウスの動物実験を行い生体に傷害を与える温度の特定と免疫を含む生体反応・病理を解明しました。直腸温42.5℃を超える加温は動物に対し粘血便や肝炎など確実に傷害を与え、白血球のうち顆粒球が急速な崩壊を始め、直腸温43.0℃は致死的でした。
また、三菱レイヨンが開発した1,000ppmを超える高濃度人工炭酸泉製造装置を使った温熱療法は、より安全で効果的な免疫治療を提供し始めています。日常の入浴に高濃度炭酸泉を使うことは予防医学上明らかに有効であり、少子高齢化で財政的な危機を迎えつつある国民健康保険医療を救う切り札となると私は考えています。
1. 温熱療法としての入浴
(1) 入浴の功罪----入浴事故死は年間1万4,000人!
入浴は身体を清潔にし、適切な入浴ならリラックスをもたらす効果に優れており、誇るべき日本人の生活習慣であることに異論を唱える人は少ないでしょう。しかし、年間の交通事故死が近年6,000人台と言われるなかで、入浴に関連した事故死は年間約14,000人と推定され、決して見過ごされない数字です。
図１. 月別浴室水難事故搬送数（東京消防庁、2001年）
図２. 年齢別入浴事故発生状況（東京救急協会、2000年）
図３. 入浴事故診断名（東京消防庁、1999.10～2000.3）
図４. 入浴死発見時の湯温（横浜市立大、相原弼徳）
上記のような現在入手しうる統計資料に依れば、高齢者が冬季に脳と心臓の血液循環器疾患で亡くなっているという図式が浮かび上がってきますが、その大きな要因の一つに入浴時の湯温があります。入浴死亡事故時の浴槽の湯温を測定した横浜市の統計では、41℃以上が約９割を占めています。45～47℃という常識では考えられない温度すらありますが、大半は日本人の好む入浴温度である42・43℃前後での事故死が特徴的です（図４）。
湯温42℃以上での入浴は交感神経刺激の温度域です。この温度域では、入浴の初期段階では熱さを感じ、血管が拡張するどころか、はじめは一時的に収縮して熱の取り込みを阻害する方向に働き、そのため急激な血圧上昇で危険な状態が生じます。しばらくすると、血管の拡張が起こり大量の発汗による脱水による血液粘度の上昇と、血小板の金平糖状化（偽足形成）など血液凝固の促進が起こり、血栓の形成が起こりやすくなります。
また、生死には直接関わらないまでも、ボディーシャンプーの普及・抗菌グッズなど過度の清潔志向は、皮膚の適当な湿り気を保持するために必要な皮脂までも剥ぎ取り、乳酸菌など弱酸性を保持して病原菌の繁殖を抑制する正常な皮膚の細菌叢を破壊するなど、皮膚のバリアー機能を低下させて新たな皮膚のトラブルを起こしているのも見逃せません。
(2) 自律神経と免疫
単に身体を清潔にするだけならばシャワーでも代用できますが、入浴による温熱や水圧・浮力などの物理的刺激が自律神経に密接に働きかけ、更に自然治癒力の一つである免疫に密接に関与しているというならば話しは別でしょう。
弊社でも法律に基づいた企業内集団検診を実施しています。その検査項目に白血球の数は入っておりますが、顆粒球、リンパ球、単球の３つの構成細胞について調べる項目「白血球の分画」は入っておりません。検査会社に数百円出して追加の検査依頼をすれば、余計な血液を採られることもなく白血球分画検査の結果が出てきます。
これらは個人情報ですので、弊社ではアンケートに協力してくれる方からデータをいただきました。その際、お風呂について主に入浴かシャワーかの項目を入れました。夏場はシャワーで済ませる人が多いからです。元々数値自体個人差が大きいのですが、解析する数が多くなると因果関係の本質が見えてきます。
表１. 弊社本社20～40歳代社員の集団検診アンケート結果（2005年6月実施、各18名）
2005年の夏場の検査結果をまとめたのが表１です。年配の方はほとんど入浴派だったので除外し、入浴派とシャワー派が半々だった50歳未満の人のデータだけを表示しています。正確さを期すならば、それぞれ30名以上のデータがあれば統計学的な処理による有意差検定が可能でしょうが、それでもこの表から入浴派の方はリンパ球が多く、顆粒球が少なく、シャワー派はリンパ球が少なく、顆粒球が多い傾向が見てとれます。翌2006年も同様なアンケートを実施しましたが、宣伝のおかげかシャワー派が随分と減りました。白血球の分画こそ他の企業集団検診や地域集団検診でも是非取り入れてもらいたい項目です。
しかし、免疫状態や免疫力など計測することが出来ないと主張する極端な医学者もいるくらい、現実の白血球の分画検査は医療現場でも軽視され、日常の診療での基本血液検査項目セットにすら入っていませんが、私はそうした立場を取りません。事実血液検査のうち、白血球の総数、分画は細菌感染の有無、一日の活動量、ストレス、免疫状態を知る重要な量的な指標です。確かに、これらは季節的な変動や一日の時間帯でも大きく変化しているため、意味が薄いと思われがちです。しかし、連続して観察すると大方の免疫力を量的な変化として推し量ることができます。
一方、自律神経系は内臓、血管、リンパ節など広く分布している神経系で、血液循環、消化吸収・排泄、内分泌、生殖など生命活動を維持してゆくとき、生体の様々な機能を無意識的に調節する神経系です。「餌取」行動など活発な運動を司る交感神経系と休息を司る副交感神経系からなり、臓器や組織はこれらの二重支配を受け、かつシーソーのように拮抗支配を受けています。
自律神経系の誕生と発達を進化的に見れば、ヒドラやイソギンチャクのような下等な多細胞生物から進化する過程で、まず消化・吸収・排泄を統合して司る副交感神経系が現れ、その後活発な運動を可能にする脊椎の発生と椎骨数の増加による胴長進化の過程で交感神経系が発達して来たものと考えられます。その証拠に脊椎動物の自律神経系を解剖学的に見れば、副交感神経系の走行は頭部と仙骨とに前後（ヒトの場合は上下）に分断されています。
一方の交感神経系は椎骨毎に神経節を作り活発な運動のために血圧・心拍数・血糖を上げ、血流を筋肉に重点的に回すことで支えています。
従来有名なハンス・セリエの「ストレス学説」で副腎皮質ステロイドなどのホルモンによる胸腺（免疫）への影響は知られていましたが、自律神経が血液中に単独で遊離している白血球を直接支配しているとは誰も考えつきませんでした。
その自律神経と免疫が密接に関与していると分かってきたのは今から10年ほど前の1995年のことです。当時新潟で腕の良い外科医であった福田稔医師は、晴天が連続した後の休日に限って腹膜炎を起こすような重度の虫垂炎（いわゆる盲腸）の急患手術でゴルフの予定を幾たびもキャンセルせざるを得なくなった経験から、気圧の変動と重度の虫垂炎の発生との因果関係を見つけ医学生物学雑誌に投稿しました。
たまたま同じ雑誌に掲載された論文を執筆した免疫学者の安保徹新潟大学大学院教授に思い切って相談したことから、二人三脚で練り上げた『福田-安保』理論が生まれました。しかし、実はこの理論の源泉となる先駆的な理論があったのでした。
当時、古いタイプのリンパ球であるNK細胞に対する世界標準となる特異抗体を作り、胸腺外分化Ｔリンパ球の存在を証明するなど既に免疫学で著明な業績のあった安保教授は、以前から白血球の規則的な日内変化や季節変動に気付いており、自身が東北大学の医学生時代に齋藤章講師から受けた講義の記憶を思い起こすものでした。
齋藤が自説を「生物学的二進論」と名付けた理論と言うのは、ぶどう球菌のような化膿性の細菌感染が起きると顆粒球が増えると同時に脈が速くなる、即ち交感神経緊張状態になる一方で、カタール性やアレルギー性炎症を起こすウイルスなど感染や異種タンパクの侵入の場合はリンパ球が増えると同時に徐脈になる、即ち副交感神経刺激状態になることを見いだしました。別の言い方をすれば、「感染微生物の粒子の大きさによって、担当する白血球の顆粒球とリンパ球の比率が決定され、自律神経の刺激状態も異なる」、と言うものでした。
齋藤がこの先駆的な観察から導き出した理論を提唱した時代は、ちょうど高度成長期の生活レベルの向上と抗生物質の普及により、古典的な細菌感染症が激減しつつある時代でした。この時代の流れにあっては齋藤理論が見向きもされなかったのは当然でした。こうして一旦埋もれ忘れさられてしまった齋藤理論ですが、30年以上もの時を経て息を吹き返し、新たに「福田-安保」理論として、更に進化することになるのでした。
その理論の根幹は、「ストレス・緊張・活動」を司る交感神経が副腎髄質からのアドレナリン、神経繊維末端からのノルアドレナリンを介して白血球の顆粒球（好中球、好酸球、好塩基球）を支配し、「休息・リラックス・消化吸収・排泄」を司る副交感神経がアセチルコリンを介してリンパ球（寿命１週間以上、35～41%、1マイクロリットル= mm3 当たり2,200～2,800）を支配しているという「白血球の自律神経支配」です。
血液中の白血球は全て貪食作用に優れた食細胞マクロファージから進化したと考えられます。リンパ球は消化が不十分なたんぱく質由来のオリゴ・ペプチド分子（アミノ酸が数個～数十個程度繋がったもの）を処理するのに接着因子を発達させてきました。
リンパ球は脊椎動物の上陸に伴い、鰓の一部から進化した胸腺で高等教育を受けたリンパ球が、外来異物（主にたんぱく質）やがん細胞も含め異常になった自己細胞の除去、ウイルス感染細胞の除去、抗体の産生など今では「新しい」免疫の中枢を担っていますが、NK細胞や胸腺外分化Ｔ細胞のような「古い」タイプのリンパ球も忘れてはな�閧ﾜせん。高等生物の免疫系はこの「古い」免疫系を土台に、新たに付け加わった胸腺由来Ｔ細胞の「新しい」免疫系の二層構造をなしているのです。
顆粒球は魚から両生類を経て爬虫類に到る脊椎動物の上陸に伴って発達した大腸（水分の再吸収器官）での細菌感染や活発な活動時の外傷からの細菌感染から有害な活性酸素を逆手にとって、侵入しようとする細菌に対し、食菌・自爆しながら防ぐ役割を担って進化してきました。
長時間労働、悩みなど心身のストレスが多い現代社会では、交感神経緊張状態が数ヶ月・数年と長期間継続しがちです。顆粒球（54～60%が理想的）は細菌感染から体を守るという重要な役割を担っていますが、末梢血中に現れてからは2～3日しか寿命がなく、過剰な顆粒球は死ぬときに活性酸素など大量に放出して組織傷害を来します。
また、交感神経緊張が連続するとアドレナリンとノルアドレナリンの作用で血管収縮が持続して血流障害も起こります。その結果、肩こり、便秘、高血圧、消化器潰瘍、化膿、更に5～10年かけてがんなどの慢性疾患が発症すると説明しています。
即ち、「病は気から」と昔から言われてきましたが、まさに大脳皮質の高度な精神活動である心のありようが、大脳辺縁系、次いで間脳の視床下部を経由して自律神経系に強く影響を与え、更に免疫系に作用しているのです。
図５. 『福田-安保』理論によるストレスと慢性疾患の発生メカニズムおよび治癒過程
消炎鎮痛剤やステロイド剤の長期にわたる使用も、激しい交感神経刺激状態の連続と免疫抑制状態をもたらし、リウマチ、SLE：全身性エリテマトーデス、重症アトピー性皮膚炎、潰瘍性大腸炎、クローン病などの難治性疾患、いわゆる「自己免疫性疾患」「膠原病」を生み出しています。これらの疾患は一般に免疫亢進疾患であると誤って理解されています。
確かにこれらは本来副交感神経優位、つまりリンパ球の過剰状態の人がストレスに過剰反応して始まることが多く、標準的治療の開始から交感神経を刺激し続け、一転して免疫抑制状態になります。病状が進行するに連れ、更に追い打ちをかけるように更に強いステロイド、解熱消炎剤の連用で胸腺由来の「新しい免疫」の主役であるリンパ球の数と活性を下げる治療がなされます。
持続する交感神経緊張で分泌されるアドレナリン、ノルアドレナリンは血管平滑筋を収縮させ、血流障害を起こします。その結果、強い体の「冷え」を伴う免疫抑制状態となって、自己抗体を産生するB-1細胞や自己の抗原に反応性のある胸腺外分化T細胞:NKTやNK細胞が主役の「古い免疫」が全面に出るため「自己免疫疾患」と判断されているのです。
『福田-安保』理論では、このような時にこそ心身のストレスを取り除き、これらの薬剤の使用を止め、睡眠や栄養を十分摂り、副交感神経を適度に刺激することで、血流を良くし胸腺由来のリンパ球の数と活性を高めて「新しい免疫」とNK、胸腺外分化Ｔ細胞などの「古いタイプの免疫」とのバランスをとることが、健康を維持するうえで非常に重要だと指摘しています。
逆に割合としては少ないのですが、副交感神経優位が過度に持続した場合には鬱（うつ）病、アレルギー性疾患、むくみなど発病します。ですから、「普段の生活で健康を保つためには、適当な緊張と十分な休養というメリハリのある生活をすることが重要です」と指摘しています。
(3) 高精度温浴装置の開発と動物実験
温熱療法はがん患者が細菌やウイルス感染に罹り、高熱を発した後自然治癒した症例の観察からヒントを得た「高体温を全身もしくは一部に人為的に誘導する」治療法で、がんを始め種々の疾患を治療する方法です。英語ではハイパーサーミアhyperthermiaとかthermotherapyと呼ばれています。
1984年日本人研究者によって試験管内で培養されたがん細胞が熱に弱いことが報告されて以来、今から15～20年前に腎透析をまねて、体外で加温した血液を再び体内に戻す体外循環法などの全身温熱療法のブームがありました。しかし、当時の技術で局所や全身を目標とする温度と維持時間（41～43℃で数時間）を達成することは至難の業でした。
マイクロウェーブ、ラジオ波、遠赤外線による加温など、今日まで多くの方法が考案されて実施されてきました。そのうちに、大がかりな手技の煩雑さの割には治療成績が良くないなど、困難を極めた全身温熱療法は次第に廃れ、比較的容易な部分温熱療法にシフトしてきました。
これらの温熱療法を支配してきた基本的な考え方は、がん細胞の「易熱性」に注目して、悪いがん細胞をより高い温度と長い時間で「熱で焼き尽くす」とか「皆殺し」という考え方です。今も温熱療法の研究者・臨床医の主流は、放射線や抗がん剤と併用しつつ、この「焼き尽くす」理論に固執し、免疫のことをあまりかえりみていません。元々せいぜい40℃程度の自己発熱によるがんの自然治癒の観察から始まった温熱療法のアイデアは、出来るだけ高い温度で「焼き尽くす」という考え方に変質してきたのです。
私たちは、温熱療法ががんの標準的治療になり得ていない現状では、正確に加温・計測を行い、免疫を含めた生体の反応を調べることが必要と考え、全身温浴による高精度温浴装置を開発しました。人体の約70％は水分です。比熱の大きな水からなる身体を隈無く平均的に温めるには温水を使うことが最も効率的です。そのうえ10数個のノズルから毎分70リットルで吹き出す正確に温度コントロールされた「動的」な温水は通常のお風呂の「静止」温水とは違って、効率よく熱の移動を行います。
図６.
弊社開発の高精度温浴装置（0.1℃設定、±0.05℃）
人への応用に先だって温熱療法の基礎的な問題点の解明と安全性を確保するために、我々は大阪府立大学の獣医グループの協力を得て一連のイヌとネコを使った動物実験を行いました。
その第一の目的は温度による傷害です。一体何℃でどのような熱傷害を起こすのか、という問題です。その答えは、核心温の一つである直腸温で42.5℃から出血傾向が著明となり、43.0℃は致死的でした。このとき血液中の顆粒球が急激に変成・壊死することが分かりました。この短期間に大量の顆粒球の崩壊に伴って、細胞内活性酸素、ロイコトルエンなどの物質の放出が組織破壊を起こしえます。実際、肝酵素値の劇症肝炎レベルの急激な上昇が観察されました。
高体温が血液中のエンドトキシン（細菌毒）レベルの急上昇を引き起こし、死に至るとの報告がありますが、この顆粒球の急速な崩壊が引き金となって、大腸でのバリアー機能を削ぎ、エンドトキシン血症になって死に至ると説明することが出来ます。
図７. イヌにおける一時的な加温と体温低下が免疫に及ぼす影響（日本ハイパーサーミア学会誌,
22, 2006）
次により安全な加温である直腸温41.5℃２時間加温群と対照としてイヌ、ネコの平熱である38～39℃での加温群での免疫の変化を調べて見ました。予想通り41.5℃加温群では加温後２週間以降もリンパ球の増多が持続しました。予想外だったのは、平熱加温群でも同様かそれ以上のリンパ球の増多と顆粒球の減少が持続したのです。
そこで急遽、麻酔だけの群を追加しました。全身麻酔を施している間、イヌの直腸温は低下し続け2～3℃低下しました。その結果、麻酔後２週間リンパ球の減少傾向が見られました。
これらの動物実験の結果は、従来言われてきた「（適切に）温めれば免疫力は増し、冷やせば免疫力は低下する」とい�､ことを具体的に裏付けるものでした。
(4) 熱ショックたんぱく質HSPsと免疫
細胞内で合成されたタンパク質=ポリペプチド鎖は「シャペロン」とも呼ばれる熱ショックたんぱく質によって介添えを受け、正しく折りたたみ立体構造を形成します。更に活動すべき細胞内の場所に輸送され、変成を受けた場合は元通りに修復するか、分解の系に回します。このようにHSPsはタンパク質の生成・輸送・品質管理を担う重要な役割を果たし、全細胞タンパク質の15％にも達することもあります。
がん細胞を「焼き尽くす」立場を取る従来の温熱療法は、HSPsはがん細胞自体も熱抵抗・熱耐性を獲得するため、温熱治療の「敵」でした。しかし、最近HSPsが特に免疫を亢進すると言う研究報告がなされ、「味方」と解されるようになりつつあります。
すなわち、手術で摘出したがん組織から精製したHSPsはがん抗原も噛み込んで自己ワクチンとして働く。抗原提示を亢進する。がん細胞の自殺死を促進する。マクロファージの成熟と抗原提示を促進する、などです。
私たちの提唱する温熱療法は従来のがん細胞の「易熱性」仮説に基づく「焼き尽くす」立場は取らず、免疫を上げて排除する立場を取ります。温浴レベルの加温でも高濃度炭酸泉を用いれば、体に負担をかけることが少なく直腸温で２℃程度の上昇が得られます。一時的な発熱状態が再現され、HSPsを熱誘導することが可能です。
2. 高濃度人工炭酸泉温浴
(1) 高濃度人工炭酸泉による血流の著明な増加
炭酸泉とはCO2つまり二酸化炭素ガス=炭酸ガスが溶け込んだ水です。一部は電離してイオン化していますが、大部分はそのまま溶け込んでいます。pHは肌に優しい4.5～５の弱酸性です。１気圧での炭酸ガスの溶解濃度は温度に依存して温度が低いほど溶けやすく、温度が高くなると急激に溶けにくくなり、入浴に適した40℃での飽和濃度はおよそ1,000ppmです（図８）。
しかし、天然の過飽和状態の高濃度炭酸泉は一般に泉温が低く、ヨーロッパの炭酸泉の温度は最高でも34～35℃です。世界有数の火山国で温泉大国の日本ですが、地下の圧力から解放され地上に湧出したときの源泉が60℃以上の場合、炭酸ガスは急激に抜け出しますから、例え湧き出し口の源泉の温泉分析表にあったとしても、湯船に来る頃には抜けてしまっています。
高濃度の炭酸泉は泉温が25℃以下の炭酸鉱泉として散在し飲用されていますが、浴用に適した体温程度かそれ以上の炭酸泉は、大分県の長湯温泉のラムネ湯（1,200ppm、32℃）、七里田温泉（1,300
ppm、36℃）、島根県の小屋原温泉、福島県の大塩温泉、北海道の五味温泉などわずかに知られるだけです。残念ながら、それ以外に実質的な高濃度炭酸泉はありません。
しかも、溶存しているガスが撹拌や熱で容易に抜けてしまう炭酸泉は輸送や再加温には全く向かないため、多くの人にとって今まで手が届きませんでした。
図８.
天然炭酸泉（長湯、ラムネ温泉）と温度依存性の溶存炭酸ガス濃度
この技術的な壁を打ち破って、三菱レイヨン・エンジニアリングは膜技術を応用した人工炭酸泉�ｻ造装置を開発しました。この装置は温水に炭酸ガスを効率よく溶け込ませ、1,100～1,300ppmの過飽和状態まで作れます。入浴するとヨーロッパでは『真珠の泡』と呼ばれる細かな炭酸ガスの泡が皮膚全体にびっしり付いて、それが心地良いのです。浸漬部分の皮膚が５分ぐらいで赤くなります。ちなみに炭酸入浴剤による薬剤法では、１錠で50～100ppm程度しか到達できません。
この技術的なブレークスルーにより、天然にはない体温以上の高濃度炭酸泉温浴という新たなカテゴリーが出現しました。つまり、炭酸泉のもつ著明な血管拡張作用と温熱効果の相加・相乗効果が期待できるようになったのです。
図９. 細動脈の走査電子顕微鏡写真（愛媛大学、藤原隆、NHK TVより）コイル状の平滑筋と自律神経繊維網による支配
高濃度炭酸泉はどうして温度に依存せず血管拡張作用があるのでしょうか。それは、いくつかの生理メカニズムが知られていますが、高濃度（最低でも800ppm程度は必要）の炭酸泉浴をしますと、水に溶け込んだ高濃度の炭酸ガスの一部が皮膚から吸収され、最終的には呼気から排出されます。この時血管内皮細胞が作るごく微量のNO：一酸化窒素（狭心症のニトログリセリンと同じ作用メカニズム）の作用に加え、適切な温度では副交感神経の刺激で毛細血管の血流量を決めるバルブの役割をしている細動脈の血管平滑筋（コイル状に締め上げる筋肉で括約筋=スフィンクターとも呼ばれています）が緩んで皮膚の血管を一気に拡張させます。
図10.
高濃度炭酸泉による血流亢進のメカニズム
そのため、まず皮膚の血流量が劇的に増えることから始まって、酸素と二酸化炭素の交換、栄養素と乳酸などの老廃物や熱の運搬、免疫細胞の遊走が効果的かつ全身に波及します。42℃以上の高温浴の温熱作用でも起こりますが、38～40℃のぬるめの温度域では真水の場合の数倍にも及びます。体温より低く高濃度の炭酸泉の多いヨーロッパ、特にドイツでは血圧を下げ心臓に負担をかけないため、心臓療養に使い「心臓の湯」と言われています。
適切な温度である38～40℃での炭酸泉温浴は、疲労回復、筋肉痛・関節痛・腰痛などの疼痛緩和、高血圧症、動脈硬化症、リウマチに有効とされています。その他、リラックスをもたらす副交感神経優位の体調に導き入れることで、リンパ球の数・割合および活性が増します。その結果、自然治癒力を引き出し、急性疾患以外の大概の病気に有効と考えて大きな間違いはないと思います。
高濃度炭酸泉のpHは4.5～5程度の弱酸性です。このpHはお風呂で老人の肺炎を起こすレジオネラ菌の増殖を抑制します。また、外部からの細菌感染を防いでいる皮膚のpHとほぼ同じで肌に優しいアストリンゼント（肌の引き締め）効果を持っており、美肌効果があるとされています。また、一部の人には喜ばしい『副』作用として、頭髪の発毛や黒化があります。
(2)
健康には良いのは酸素か二酸化炭素か？
最近、酸素バー、酸素入浴、酸素飲料、高濃度酸素カプセルなどで一時的に眠気や尿量が増えたり徐脈を来す副交感刺激反応が現れ、あたかも高濃度酸素が体に良いと錯覚させるような宣伝や製品が一方では登場しています。有名スポーツ選手が使用したことから知られるようになったのかも知れません。しかし、これらの副交感刺激反応は多すぎる酸素を取り込まないようにする生体の一時的な「いやなもの反応」で、長時間曝されると確実に過剰酸素による傷害を来します。
まず、酸素は皮膚から直接吸収されることはありません。低酸素血症などの心肺機能に異常がない一般人では、肺でのヘモグロビンの酸素結合率は98%前後です。動脈血１リットル中のヘモグロビン量は約150g、1gのヘモグロビンに1.34mlの酸素と結合しますから酸素量で200mlですが、直接血漿に溶け込む酸素量はわずか3ml、1％程度です。仮に溶解酸素量が倍になっても、数回の深呼吸には及びません。
図11.
ほ乳類の進化と地球酸素濃度の変遷（データはNHKテレビより）
問題は過剰な酸素による深刻な健康傷害です。汗腺が変化して乳腺に進化することで誕生したほ乳類は２億２千年前の中生代に爬虫類から派生し、恐竜の繁栄時代にはラット並の大きさのままでした。当時の酸素濃度は現在の半分強程度であり、現在までほとんどの期間を低酸素状態で進化してきました。そのため、過剰の酸素は生体にとって有害であり、その具体例を幾つか挙げてみましょう。
・ 胎児の動脈血の酸素量は胎盤を介するため、母親の動脈血の1/3程度と言われており、低酸素状態で発育しますが、誕生を境に劇的な酸素濃度の上昇に遭遇することになります。
・ 新生児黄疸は生後2～3日の９割以上の新生児に見られる生理的黄疸で、1～2週間で消えてゆきますが、今までその原因とメカニズムは不明でした。自律神経免疫学の提唱者の一人である安保教授はその原因を酸素ストレスとしてそのメカニズムを解明しました。それは、胎盤から肺呼吸の開始→酸素ストレス→交感神経緊張→急激な顆粒球増多（15,000/μl）→顆粒球の寿命（約２日）による活性酸素放出→肝臓の胎児造血組織の破壊と脂肪肝（骨髄造血への完全移行）→新生児黄疸の発症がほぼ３日間、と言うのです。
・ かつて乳児の失明の一大原因だった未熟児網膜症は未熟児によく起こる網膜の出血や混濁です。未熟児に保育器で多量の酸素補給をすることが原因と判り、酸素を控えるようになって減少しました。
・ 世界中どこを探してみても、高地に住むこと自体が寿命を短くしている事実はありません。それどころか、世界の三大長寿地域として有名なコーカサス（グルジア、標高500～2,000m）、フンザ（パキスタン、中心部の標高2,400m）、ビルカバンバ（エクアドル、中心部の標高1,700m）はいずれも高地です。
・ちなみに、日本でも男性の都道府県別平均寿命の最も高いのは、平均標高が最も高く酸素濃度が最も低いはずの長野県です。男性79.84歳（全国平均78.79歳）、女性86.48歳（同85.75歳）は第５位（2005年）です。また高齢者の有業率30.7％（同22.7％）は飛び抜けて高く、その結果、長野県の一人当たりの高齢者医療費は全国最低で、ワーストワンの福岡県の2/3程です。
・ 職業上気圧が高く酸素濃度が高い労働環境下の潜水夫やかつての潜水艦乗員などでは酸素過剰症になり易く、顆粒球の増多、肺障害が知られています。
・ 米国FDA(食品医薬品局)は“Oxygen
Bars: Is a Breath of Fresh Air Worth It?”という署名論文をホームページに掲載し（http://www.fda.gov/fdac/features/2002/602_air.html）、安易に過剰な酸素を摂取することを諫めています。
・ １年のうち相対的に気圧が高く気温が低めの冬季は、交感神経・顆粒球優位であり、脳卒中、心筋梗塞をもっとも起こしやすい季節です。
・ 帯状高気圧のように晴天が連続したとき、破れると重篤な腹膜炎に至るような化膿性の虫垂炎の割合が多くなる経験的な事実から、福田稔医師は安保徹教授と共に自律神経免疫学『福田-安保』理論を生み出しました。
・ カゲロウやセミの成虫の寿命が極端に短いのは、幼虫時期の土中の低酸素濃度が一気に上がるための酸素ストレス傷害によるものとされています。
一方、大気中の二酸化炭素つまり炭酸ガスは地球温暖化ガスとしてやり玉に上げられていますが、炭酸ガスは植物の光合成には不可欠なガスであり、ある程度の炭酸ガスによる温暖化作用が無いと地球は-15℃に寒冷化するとされ、適切な濃度を維持することが必要です。
炭酸ガスは生体に対してはリラックス（副交感神経刺激）をもたらすガスです。気体状態では皮膚から吸収されることはほとんどありませんが、水に溶解した遊離炭酸ガスの状態では、濃度に依存して容易に皮膚を通過・吸収されます。ビールやコーラなど炭酸ガスを高濃度（3,000～5,000ppm）含む炭酸飲料には、容量で２倍前後の炭酸ガスが含まれていますが、その大部分は消化管壁から吸収され、リラックスをもたらし消化・吸収を助けます。
皮膚や消化管から吸収された炭酸ガスは、組織や臓器での酸素交換を促進し（酸素解離曲線の右方移動=「ボーア」効果）、血流に乗って肺から速やかに排気されます。
(3)
高濃度人工炭酸泉の医学応用
高濃度炭酸泉治療はドイツなどでは保険適応になっており、高血圧、血流障害、心臓療養などの循環器の機能向上、難治性で出血のない外傷、褥瘡、潰瘍などの治療が行われています。
日本でも、高濃度炭酸泉の足湯を糖尿病の合併症であるASO：閉塞性動脈硬化症による下肢の壊疽の治療に積極的に使われ始めています。中でも名古屋共立病院では、月間数百症例もの治療を行い、生活指導とも併せて炭酸泉足湯治療で手術適応症例の８割程度を治癒していると聞いています。
しかし、現在の保険医療では壊疽の標準的治療法は切断手術であり、患者にとっては手術よりはるかに優しい治療法であっても、保険で認められていない現状では病院側に経済的なメリットは全くありません。このように高濃度炭酸泉足浴治療は、先見的で良心的な医療現場で細々と行われているのが現実です。それでも、500を超える医療機関に高濃度人工炭酸泉装置が導入されています。
我々は、足湯など部分浴にとどまっている炭酸泉治療を全身に適応するために、独自に開発した高精度温浴装置と高濃度人工炭酸泉を組み合わせた全身温熱療法の可能性を追求すべく、個人病院での試験的運用を2005年の12月から始めてきました。39.0℃30分間に続いて40.0℃30分間の高濃度炭酸泉温浴で熱ショックたんぱく質を誘導し、免疫を亢進する治療法です。
現在２カ所の病院でがんや、リュウマチなどのいわゆる自己免疫疾患などの慢性疾患の治療が試験的に行われています。
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一般家庭への普及
このように高濃度炭酸泉はヨーロッパや日本でも天然のが存在し、数百年に渡って世代を超えて連用され、その安全性に関して検証済みです。効果に関しても非の打ち所がないほど、科学的実証がある高濃度人工炭酸泉の一般家庭への普及は、血流促進・疲労回復・疼痛緩和・副交感神経刺激作用などで病気を予防するうえで極めて重要であるということに異論はないと思います。
2005年三菱レイヨンと弊社の話し合いの結果、より小型で使い勝手が良く、安価な家庭用高濃度炭酸泉製造装置を新たな開発が行われ、同年の年末から市場に投入し始めました。三菱レイヨンの『ソーダバス』とその姉妹機である日ポリ化工の『シードル』です。
図12.
弊社の高濃度人工炭酸泉製造装置『シードル』浴室設置例
これらの家庭用高濃度炭酸泉製造装置は従来の装置の弱点をほぼ克服し、完成度が高い製品になっています。これからの一般家庭への本格的な普及のカギは、1. 施工・メインテナンス網の構築、2. 炭酸ガス・ボンベ供給網の構築、3. 装置の価格にある私は見ています。
まず、一般の家電品とは違って、この装置には必ず設置工事が伴います。水道、電気、炭酸ガス配管工事です。設置工事はある程度標準化していますが、既存の浴室に設置する場合、工事はケース・バイ・ケースで難易度がまちまちです。また、ボンベの炭酸ガスの圧力を５気圧程度に落とす圧力調整器は保安上３年ごとの交換が推奨されています。そのため、定期的なメインテナンスの対応が全国レベルで必要です。
次に炭酸ガスの供給網です。炭酸ガスは石油精製過程、火力発電所、溶鉱炉などから排出される炭酸ガスを回収・精製して資源として有効再利用されています。不完全燃焼によって発生する猛毒の一酸化炭素を全く含みません。産業ガスの中では最も安価なガスです。しかし、ボンベは定期的に検定を受けて安全性を確保しなければならないことと、充填所からの配達のコストが地域によってまちまちです。炭酸泉温浴用の炭酸ガス・ボンベには主に30kgと７kgボンベが使用されていますが、ボンベ・サイズによってラニング・コストが大きく異なります。
食品添加レベルの30kgの炭酸ガス・ボンベを使えば、平均的な家庭で2～3ヶ月もち、１日当たり100円程度に押さえることが出来ます。ところが、我々が標準としている30kgボンベが設置できない場合、割高な７kgボンベの選択になりその交換頻度は半月程度で、１日当たり炭酸ガス代が数百円に跳ね上がります。現在地域における炭酸ガスの供給状況は群雄割拠状態です。幾つかの地域では、地域で有力な炭酸ガス供給業者と我々との間で既に合意ができており、その地域全体をカバーし、一般人にはやや難しいボンベの圧力調整器への接続サービスを含めた同一価格で提供できるようになりつつあります。
猛毒の一酸化炭素と違って、炭酸ガス自体の毒性はずっと低いものの数％位から中毒症状が出るといわれています。一般家庭に普及させることになるとあらゆるケースが起こりうるので、中毒事故を起こさない配慮とユーザーへの注意の喚起が必要です。まず、高濃度人工炭酸泉は必ず浴室の換気が必要です。ジェットバスと追い炊きは急激に溶存ガスを気化させるため禁止です。
最後に
日常の炭酸温浴が病気を予防する上で有効であることを証明するには、将来の疫学調査が必要です。まず当面の目標として、炭酸泉温浴が数万数十万もの一般家庭に普及させ、５～10年先に疾病発生率を調査することでその有効性が科学的に証明されることになると思います。
確かに多額の開発費用と時間をかけ、かつ特殊な部材を多用しているこの装置は現段階では高価です。しかし価格については、一般の工業生産物と同様に、大量需要を掘り起こすことで量産効果が生まれ、順次に値下げできるのではないかと思います。その場合、早めの購入者には不公平になるかも知れませんが、いかなる人をもってしても時間を遡って健康を買うことはできませんから、納得していただけるのではないでしょうか。
我が国が本格的に迎えつつある少子高齢化社会で、この炭酸泉温浴が普及し末永く使われ、その結果として国民の健康増進に繋がれば、医療費・介護費用の節減、高齢者の社会参加など社会的貢献は計り知れないものになる、と私は大いに期待しています。
また、炭酸泉温浴という新しい日本の生活習慣が、シャワーで済ませている国々に輸出されることになれば、日本で生まれる新たな入浴文化が人類の福祉に貢献できるのかも知れません。
引用・参考文献
1) 安保徹 著、「医療が病いをつくる ---- 免疫からの警鐘」、岩波書店、2001年
2) 安保徹 著、「免疫革命」、講談社インターナショナル、2003年
3) 安保徹 著、「体温免疫力」、ナツメ社、2004年
4) 安保徹 著、「体温免疫力で病気は治る」、ナツメ社、2006年
5) 伊藤要子 著、「HSPが病気を必ず治す」、ビジネス社、2005年
6) 藤澤重樹 著、「アトピー治療革命」、長岡書店、2004年
7) Urakawaら著、”Effects of experimental hyperthermia on biodynamics and immunity in
dogs and cats.” 日本ハイパーサーミア学雑誌、22、35-48、2006年（英文）
8) 坂井健雄 著、「血液6000キロの旅」、講談社、2001年
9) Irieら著、”Carbon dioxide-rich water bathing enhances collateral blood flow in
ischemic hindilimb via mobilization of endotherial progeitor cells and
activation of NO-cGMP system.” Circulation, 111, 1523-1529, 2005年（英文）
