ケニア旅行のTips



はじめに

 アフリカ関係のメーリングリストに参加したり、こうしてホームページを開設していますと、何人もの方々からケニア旅行についての問い合わせがあります。そこで、気のついたことも含め、普通の旅行書にないことを「ケニア旅行のTips」として幾つかまとめて書いてみました。なるべく正確な情報を記載しているつもりですが、中には私の勘違いで間違った記載もあるかも知れません。その際はご容赦お願いいたします。この情報が何かお役に立てば、幸いです。

 2000年11月現在、5年前と比べて物価は約2倍程度、1ケニア・シリング Kshs(シル)は1.4円になっています。

 日本人のケニアへの入国は、30日以内の「観光目的」のみVISAが免除されていましたが、2001年2月よりVISAがまた必要となりました。直ぐに方針を変えてもらうと困ります。ですから、出発前に在日ケニア大使館(時間とお金がより必要)で取得するか、もしくはジョモケニヤッタ国際空港に到着した時、イミグレーション前でUSドル(20-30ドル程度)で簡単に取れます。つまり、手数料収入のアップを期待しているようです。




お薦めの本

 ケニアに長期滞在を予定されている方には、以下の日本語の図鑑と、少し古くなりましたが本とが大変お役に立ちます。

フィールドガイド・アフリカの野生動物  サファリを楽しむために  小倉寛太郎 著、 講談社ブルーバックス 1,900円

地球ライブラリー 「ナイロビに暮らす」  ジャカランダの会 著、 JETRO ジェトロ  1,500円位





ナイロビの治安

 私は1992年から3年間、その後1999年の11月から1年の合計4年間のナイロビ生活をしました。ナイロビの治安は決して良いとは言えません。治安については80年代以前の話は「古き良き時代の昔話」です。ご存知のように冷戦が終わり、ケニアの東アフリカにおける地位は、もはやキーストーンではありません。アメリカは援助を減らしてきました。現在、ケニアにとって日本が最大の援助国(トップドナー)であることはあまり知られていませんが、かつてケニアがアフリカの優等生と呼ばれた70年代80年代初めの『良き時代』はとっくに過去のものになっています。慢性的に経済状態が悪いのに加え、先進援助国が何百年もかかって築き上げてきた西洋風民主主義をそのまま押しつけ、複数政党制の導入などを援助の継続の条件にしました。これが、部族政党の乱立と政治的不安定を招いていることは否めません。少なからぬ混乱はありましたが、1992年12月と1997年12月29・30日には複数政党制での大統領選挙と国会議員選挙が行われました。

 また、無政府状態の隣国ソマリアからの大量の銃の流入が犯罪の形態を変えました。国境付近では銃本体が1ドルで売り買いされると聞いたことがあります。私の子供達も通っていた日本人学校の校長先生が1995年に学校の正門で射殺され、衝撃を受けました。


 1998年8月7日ナイロビとダルエスサラーム(タンザニア)でアメリカ大使館をターゲットとする同時爆弾テロ事件が発生しました。ことにナイロビでは、多数の歩行者やを巻き込んだビルの崩壊で死者200名以上もの大惨事になりました。場所はナイロビ駅の前のラウンドアバウト近くです。この事件は、犠牲者の数といい、大量の爆発物を使ったという意味では今までに経験したことがない犯罪形態で、これまた大変ショッキングな出来事でした。


 さて前提が長くなりましたが、旅行されるときでもその国の政治的・経済的・宗教的状況を知っておくことは、単に旅行を楽しむよりずっと楽しいと思います。

 本題ですが、基本は犯罪者の目から見てハード・ターゲットになることです。反対のソフト・ターゲットは簡単に狙われる人です。

 まず服装です。例えば、いかにも金持ちであることをアピールするような派手な格好をする。そうでなくても日本人は肌ですぐ目立ちます。「どこどこ Army」などの上着のロゴの内容にも、刺激しないよう気を付けることが必要です。現地にも結構デザインの良いTシャツがありますのでそれを着るのも手です。着心地も試せるし、お土産にもなります。

 男の人では、財布をズボンの後ろポケットに入れているのも、後ろから狙われやすい。まして、日本でよく見かける財布を半分ポケットから出しているのは、極めて危険です。多少面倒でも、私は大金の場合、前のポケットに入れています。

 ウエスト・バッグは便利で安全なようですが、町中を歩くときはやめましょう。「ここに大切なものが入っていますよ」と言っているようなものです。バッグは両肩にからうタイプがいいです。引ったくられにくいからです。

 夜は極めて注意して下さい。基本的には歩かず、タクシーを使うこと。タクシーは安いです。相場は市内なら数100シル(300円)程度です。乗る前に値段の交渉を必ずしましょう。たいてい高くふっかけてきますから、言い値の半額がいいところです。スラムやモイ・アベニューから東側など特に治安の悪いところがありますから、そこは避けること。あまり観光客の行かないところです。ナイロビ市内の安ホテルや警察も100%は信用してはいけません。


 こう書くと治安がでたらめに悪いように感じるかも知れませんが、ようはハード・ターゲットになることを心がけることです。ちょっと恐い思いもしましたが、私はアフリカ、ケニアが大好きです。この大自然は本当に魅力的です。警戒次第ではかなりの割合で犯罪は防げると言われています。勿論100%ではありません。物は取られてもどうにかなりますが、命は無二のものです。不幸にして犯罪に出会ったときには、持ち物をカンパするぐらいの気持ちを持ちましょう。





マラリアの予防について

 マラリアは今でも感染症としては世界最大の死亡原因です。予防用のワクチンは何度となく試作されましたが、実用化には及んでいません。それは、マラリアの免疫が、通常のワクチンが有効な高度に発達した胸腺経由のリンパ球による免疫が無効で、古いタイプの免疫システムを使っていることが最近解明されました。

 私はケニアのナイロビに4年間、タイに半年ほど住みましたが、家族も含め一切マラリアの予防薬を飲んだことがありません。マラリアの薬は現地のTVのコマーシャルでよく見ていたものと思いますが、記憶が正しければ、クロロキン製剤だと思います。私は原虫の研究者ですが、マラリアは専門外です。しかし以下の理由で飲まなかったのです。


・アフリカでは、致命的な感染をする熱帯熱マラリアは、すでにクロロキン製剤に80-90%が耐性を獲得していること。

・予防薬自体に副作用があること。

・100%の予防が期待できないのに、逆に本人も医者もマラリアを疑わなくなること。

・潜伏期が長いため、流行地から離れても数週間以上は必ず飲み続けなければならないこと。これを忘れて、亡くなった事例を知っています。

 では、どうすればよいか、ですが。

・マラリアを媒介する蚊に刺されないよう努力することです。日本製の蚊取り線香は極めて有効です。ただし年越しのものは効き目が薄れています。現地のは効き目が悪いし、途中で消えることがあります。最近電池式の蚊取り器が市販されていますが、有効だと聞いています。また、インセクト・リペラント(虫避け)を数時間おきに「むらなく」吹き付けます。就寝時はモスキート・ネットを使用する。その際、穴のないことを確かめる。私はマラリア流行地への旅行の際は、安全ピンを持参しています。バッグや洗面道具入れなどのジッパーにいつも付けておくと忘れることがありません。

・流行地を離れて数週間から数カ月以内に風邪の症状が出たら、まず、マラリアを疑うことです。現地の診断(血液塗沫の鏡検)はルーチン化しているので、日本での検査よりある意味では優れています。検査時のエイズ感染(ケニアのHIV陽性率は15%以上、地域によっては30%にも及びます!)が心配なら、5mlの注射器(針付き)を複数持って病院に行くことです。一つは自分の採血用に、残りはプレゼントします。マラリアは早期の正確な診断と治療が大事だと聞いています。

・心配な方は、治療薬を現地の薬局 Chemist で購入して日本に持ち帰るといいです。日本では、マラリア治療薬を備蓄している病院は限られており、田舎の病院ではすぐには調達できません。

 このようにマラリア予防薬は必ずしも予防できないばかりか、自分もマラリア感染を疑わなくなるという逆の副作用があります。このため私は飲んできませんでしたし、よほどの良い予防薬が市販されない限り、これからも飲まないと思います。


 マラリア治療の特効薬として、きわめて有効かつ副作用の少ないことで近年注目されている中国のよもぎ成分「Qinghaosu チンハオスー」由来の抗マラリア薬アルテミシニンがケニアで手に入ります。コテキシン Cotexin とかアーテメセリ Artemetheri (共に中国製)という商品名で、市内や主要なショッピングセンターなどの薬屋 Chemist で処方箋なしで買えます。1クール(治療単位)入り400-700シル(600-1000円)です。保険と思って買って帰ると良いでしょう。使わずに済んだとき(潜伏期の数週間から数ヶ月を過ぎても発症しないとき)は、近くの大学病院か大きな病院に寄付すると、日本では簡単には手に入らないため、喜ばれるかも知れません。(2000年3月)

 後日、私の知人のマラリアの専門家から次のような指摘を頂きました。『しかし、この薬剤単独では再発が起こることがただ一つの欠点です。この薬剤を使いマラリアを治療する場合、初日にアルテミシニン(2T、合計500 mg) 、次の日にファンシダール(3T)かメフロキン(2T)あるいはクロロキン(4T)を投与するのが基本とされています。』(2000年4月現在の情報)


コテキシンとアーテメセリ





予防接種の事

 数週間以内の短期の滞在には必要ありません。

 もし予防接種を受けるつもりならば、黄熱病のワクチンをお薦めします。私がいた92年には、リフトバレー州で黄熱の流行があって数十人もの死者がでました。その為、当時ケニアから出国して来た人にたいして、多くの国(特にアジア諸国は敏感です)では、入国の際、黄熱のイエローカードの提示が求められました。この黄熱病ワクチンは非常に優秀な生ワクチンで10年以上100%の効果が認められるものです。発明者マックス・タイラーはこの功績でノーベル賞を授与されています。

 コレラは必要ありません。と言うより、受けるべきでありません。たとえ受けても全く効きません。今の死菌ワクチンでは予防できないからです。時間とお金の無駄になります。予防としては生水・生ものを口にしない。コレラ菌は酸性に極度に弱いため、胃酸の分泌を促進する梅干しも良いかも知れません。

 長期の滞在予定者(特に若い方)で経済的に余裕のある方は、A型肝炎ワクチンがお薦めです。最低2度接種が必要です。野生動物と接する危険性のある方は、狂犬病ワクチンも必要かもしれません。ナイロビ市内でも狂犬病の発生が見られます。

 ちなみに黄熱ワクチンは1回の接種です。幾つかのワクチン接種には適当な間隔が必要ですので予め専門病院と相談して下さい。





ベスト・シーズン

 ケニアのベスト・シーズンは何処に行くかによって違うと思います。

 確かに、マサイ・マラ国立保護区では例年7月の下旬から8月上旬にかけて、タンザニア側のセレンゲッティ国立公園からヌーとシマウマが大移動し、テレビでよく見るマラ川を渡るシーンを運が良ければ見られます。それにつれ肉食動物の活動も活発となり、ハンティングのシーンが比較的よく見られます。

 また、マサイ・マラはビクトリア湖に近いので、ケニアの他の地域の乾季と雨季の時期が違います。

 ケニア山に登るなら、絶対に乾季真っ盛りの1月〜3月初旬がベストです。

 ナイロビの7月は曇って寒い日(最高気温14℃位)が多く、「冬」です。8月から次第に乾季に入ります。薄紫のジャカランダの花が咲き誇るのは9月下旬から10月中旬くらいです。私はこの時期のナイロビが好きです。

 サンブール保護区、アンボセリ国立公園では、雨季の盛りには、ぬかるみの悪路で難儀することがあります。一般に雨季が終わり乾季の始めのサバンナは緑で草食動物の数が多く、肉食動物の活動も活発です。

 コースト(海岸)地方はさほど時期の差はないように思えます。

 イースターの4連休を除く4月から6月まではケニアでは雨季に入り、欧米のホリデー時期から外れるため、ナイロビを除く殆どのホテルやロッジの料金がローシーズン(つまり一年で最低)設定になります。数割引から半額です。日本のゴールデンウィークはこの時期に当たりますので、客が少ない時期だけに各地の観光地では歓迎されます(と思います)。





お薦めのコース

 私のお薦めのコースですが、フラミンゴのナクル湖とエレメンタイタ湖とボゴーリア湖、アバーディア N.P.(国立公園)のツゥリー・トップス(私の家族達は皆 The Ark より好きでした)、ちょっと違った動物がいるサンブール N.P.、通常7-9月のヌーの大移動が見られるマサイ・マラ N.R.(国立保護区)、キリマンジャロが見たいならアンボセリ N.P.、ケニア山 N.P.、タイタヒルの Salt Lick ロッジは個性的です。コーストならラムが特にお薦めです。ナイロビから日帰りで行けるロンゴノット火山登山(登り60分下り30分)とナイバシャ湖、皮膚もとろける強アルカリ泉(pH9.6でした)のマガディ湖(途中80万年前の人類の遺跡オロゲサイリーが見物)が良いですよ。

 せっかくのチャンスだからといって、2泊3日で有名地を3カ所を廻るような強行軍には感心しません。道路事情がはるかに悪いため、移動だけで疲れ果ててしまいます。パンクは日常的に経験します。特に雨季は四輪駆動でないサファリ・カーではスタックすることも覚悟して下さい。

 



モンバサへの旅

 モンバサはナイロビに次ぐケニア第2の町です。アラビア商人達の交易港として発達してきました。イスラムの影響を色濃く残し、ナイロビとは違った風情を楽しむことが出来ます。

 ナイロビからモンバサ島まで約 500km ありますが、往きは飛行機でモンバサ・モイ国際空港へ1時間、帰りは鉄道で14時間、がお薦めです。

 かつてウガンダ鉄道 UR と呼ばれたケニア鉄道 KR での旅は、植民地時代の風情を残す良き思い出になると思います。かつては日に2本夕方5時頃と7時頃に出ていましたが、現在は削減され、日に1便のみです。モンバサからだと、明け方列車でゲームドライブが出来るからです。予約は必要です。1等は2人のコンパートメント(隣同士はドアで繋がる)、2等は4人のコンパートメントですが、家族なら2等を選ぶことを薦めます。片道2000シル位です(2000年3月現在)。2段式ベッドと蛇口が付いていますが、その水は飲まないで持参して下さい。勿論夕食・朝食とも付いています。2回交代制の食堂車に案内されます。食事はフランス式にサーブされます。シルバーウェア(ナイフ、フォーク)のロゴをよく見るとURだったりします。

 モンバサから乗る前に駅近くで果物、ビール、飲み物、チャパティなど夜食を仕入れておきます。それに、延着すること(時に12時間)もあるので、ちょっとした食料は欠かせません。

 モンバサでの夕食はシーフードを堪能できます。特に中華は絶品です。「地球の◯◯方」などの案内書には載っていませんが、私は中華料理のギャラクシー Galaxy 本店を特にお薦めします。Archbishop Makarios 通りの西側の自動車のディーラーが集まった所にあります。海産物の中華が安くて美味しいレストランです。ジンジャークラブなどは絶品で、思わず「うまい」を連発します。タマリンドは海産物の高級レストランです。内容・値段(日本から見ればたかが知れている)とも最高ですが、小さな子供はダメかも知れません。



ラジオ・ニッポンの日本語放送

 大きなパラボラで日本の衛星放送番組が見られ、かつインターネットの時代になっても、海外に住んでいると短波ラジオからの日本の情報は貴重です。短波ラジオのアンテナは小さいので5m位のビニル被覆線を用意して、アンテナに繋いでやるとかなり感度がアップします。2000年5月現在、ナイロビで聞けるNHKの日本語放送の周波数は、以下の通りです。

現地時間11-12AM12-1PM6-7PM7-8PM8-9PM9-10PM
UTC (GMT)8-9AM9-10AM3-4PM4-5PM5-6PM6-7PM
周波数(MHz)21.5521.5512.045
11.73
15.145
21.6311.88



さいごに

 国際協力事業団JICAの任国情報が以下にあります。ご参考になるかと思います。

 学生の方は国際学生証(23歳未満の学生であることを証明するため、生年月日が西暦で入っている必要がある)を用意すると、国立公園、国立保護区、各種の入場料が半額以下になりますので、是非ともお忘れなく。では楽しい旅を。


任国情報(国際協力事業団):アフリカも含めた詳しい途上国の生活情報




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