「末期ガン科学者の生還」を読んで
「末期ガン科学者の生還」を読んで
闘病記と言えば暗いイメージで、その多くは主観的な辛い思いの記述であり、重々しく同情の念をいだくのが常ですが、この本は客観的・具体的であり、闘病者には大きな示唆に富む記述が満載されています。闘病者はもちろん、健常者でも感銘を受けることでしょう。
著者の向井楠宏さんは九州工業大学工学部の名誉教授で、2006年8月に末期の胸腺がんの診断を受け、余命3〜6ヶ月と医師から宣告されて、誰もが体験するように、絶望に陥りました。
初めは担当医師の言いなりに放射線療法・化学療法を受けましたが、あまりの副作用の激しさ、辛さに、がん細胞が死ぬより先に自分が副作用で殺されることを自覚しました。そんな時、知人のアドバイスもあって、きっぱりと3大療法と決別し、代替療法の道を選択しました。感性に優れた方です。
その年、炭酸泉の件で私に電話があり、免疫を高めるには血流を良くし、体温を上げることに納得されて発売開始直後の「シードル」を自宅に設置されました。それ以来今日まで、旅行で家にいない時以外は、毎夕炭酸泉温浴を継続されてきました。
代替療法を行う数少ない医師との出会い、漢方薬、食事療法、爪もみ、ビワ温灸、気功、足湯、炭酸泉温浴、体操・散歩、感謝の祈りなど、体と心に良いと思われることを吟味、それらを毎日実践し、以来6年、見事がんを克服しました。
真の科学者らしく自分の体験を客観的に見つめて綴った多くのがん患者へのエールであり、具体的な治療法の評価・治癒への歩みの分析的「研究記録」であります。
私も科学者の端くれとして、感動した文書があります。少し長いですが、以下に引用します。
「ある目的を達成するための研究手法にも、唯一絶対のものなどあるはずがなく、何が有用か合理的かの選択は、西洋医療、代替医療などの先入観に囚われることなく柔軟に対応し、広い視野の中から選んでゆくことこそが、研究者に求められているのではないでしょうか。
研究生活において私は、できるだけこのような態度をとるように努めてきたつもりです。そのためもあってか、代替医療をむしろ抵抗なく選択し、受け入れることができたように思います。
このような認識、態度こそが『科学的』と言えるように思えてならないのです。」(189ページ)
確かに、 がん患者に「光」を与えてくれる本です。多くの闘病者、家族、医療関係者、とりわけマニュアル医療に疑問すら持たない医師に読んでもらいたいものです。
2012年5月29日火曜日
向井楠宏さんの闘病記「末期ガン科学者の生還」
余命3〜6ヶ月と医師から告げられた向井楠宏(くすひろ)さんの著書『末期ガン科学者の生還』(カロス出版、2012年4月出版、1774円)は末期の胸腺ガンを、炭酸泉を含む代替療法で克服した闘病記。科学者らしい科学的・分析的な記載で、ガン患者を励ます内容です。